良明のターギー・ローソー

大都会のつづき

「バリバリバリーン」到着ロビーへ向かう通路を歩いていた時に、突然雷鳴のようなものが轟いた。

周りに急かされるように早足で行進していた僕は驚きで一瞬たじろぎ、それから今の出来事を理解しようと考えながら少しゆっくり歩き出した。
(何か事故でもあったのだろうか？)
…それにしては周りの人々は平然としているし…それに衝撃音は耳の中で起こったような…
(もしや鼓膜が破裂でもしたのか？)
…あぁ〜そうだったらどうしよう…夢を抱いて上京して来たのにいきなりなんて事だ…このまま病院へ直行か〜…でも保険証は持ってない…どうしよう…

と、あれやこれや思い悩んでいるうちに、あの衝撃以来「キィ〜ン」という音がずっと鳴っていた左耳は、霧が晴れるようにだんだんと、周りの音がハッキリ聞き取れる様になっていた。
(あれっ！治ってる…良かった…)
なんか分からないがひとまず病院には行かずに済んだようだ。まあ右耳はまだ飛行機に置いてきたままだけど、そのうち同じ要領で治るかも。ホッとひと安心しながら僕は歩く速度を少し早めた。

到着ロビーに着くと、大勢の野次馬が丸く連なって何かを見つめている。よく見るとその前には大きな回転台があって、荷物が鎮座したまま「右から左へ」受け流されている。なるほどこうやって預けた荷物が返されるのか〜と感心しながらも人間の輪の中へ入り込む事に気が引ける僕は、回転台の扉の向こうで作業員がせっせと荷物を乗っけている姿を想像しながら人々の隙間から荷物を見つめていた。

暫くして野次馬の数が減った頃、見覚えのある赤茶色いよれよれのバッグがやっと現れた。(あっこれだ！)少し緊張しながら荷物を取り上げロビーを出る。どこへ行ったものか悩みながらキョロキョロあたりを見回している時、見知らぬ声が遠くで僕の名を呼んだ。
「長嶺くんか？」

またつづく…

＊写真は新宿で撮ったものです。今では見る事の無い黄色い公衆電話、こんなに必要だったんか？＊